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椅らば大樹(16)

神宮の巨木

11月3日の「渡始式」でお披露目をすませて新しくなった宇治橋を渡って、伊勢神宮にお参りしてきました。
伊勢神宮の参拝は、まず外宮に参拝したあと、江戸時代には全国有数の妓楼が軒を並べていた旧遊郭街跡を抜け、今日的な参道「おはらい横丁」、宇治橋、と渡っていよいよ鬱蒼とした内宮の森に入って行くわけです。ご承知のように高さ30mあろうかという大木の森です。内宮には皇大神宮、外宮には豊受大神宮、さらに一帯に別宮、摂社、末社、所管社、全部で125の神社があると言いますから、まさしく神々の森、ご神木の集合体と言えましょう。この巨大さ、この奥深さ。その全体に「日本人のふるさと」と形容される「何か」がヒッソリ、ズッシリと存在しているように感じられるのです。
西行法師の「何事のおわしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」はまさに伊勢神宮の本質を伝えています。縄文時代にも弥生にも、さしたる人口集中のなかったこの地域が、五十鈴川の清冽さがあったにしても、なぜ神々の森として畿内から遠く離れて選ばれたのか。何が決め手になったのか判らないままに、神々の森が出現し、「かたじけなさに涙」する空間が2000年にわたって維持し続けられているのです。

2009/12/08