バックナンバー

「倚らば大樹」‐(34)

空中「ハルカス」が完成!、、、心配?

3月7日、4年がかりで天空へ向かった「あべのハルカス」がついにグランドオープン。空中300mからの風景が展望台入場料1500円で売り出されました。眼下に見えるJR環状線、関西線、近鉄南大阪線、南海電車、路面の阪堺線、
上町線などが鉄道模型のように可愛らしく走り回るのを見ているだけで1500円の値打ちは十分。この風景が愛される先には大阪の緑化や公園整備の夢が、、、と胸ふくらむ思いが広がります。
ただ、この「閑話」のバックナンバーNo.29(「写経堂脇のハンカチの木」)で「住み心地優先の環境空間に航空母艦が横付けして来るような」と心配したように、こう言った「巨大施設」には少なからぬ圧迫感・不安感がついて回ります。
 写真はハルカスとは正反対の住空間―ハワイの住宅です。よく見て頂くと中央ちょっと下に白い郵便受けが写っていて、その後ろにアンブレラアカシヤの巨木とその樹下にスッポリ収まった二階建て住宅であることが分かるでしょう。私の勝手な命名で「ターザンハウス」と呼んでいるこの種の住宅が周囲に対して圧迫感や不安感を与えることはありません。むしろしばらく置いておけば朽ち果てて、樹木だけが残る仮の存在。まさしく「色即是空」の存在と言えそうです。
 ハルカスが日本一の高さを誇る偉大な業績である事はわかります。しかし、何やら心配で、何やら不安な、余り好感のもてない、可愛げのない、、、そんな感じがしてしまう事も忘れないでいるべき、、、、ではないかな?そんな気がします。

2014/03/09


布村晃一

世界の大都市建築は空へ、空へと竹の子のようにニョキニョキ伸びています。
東京も世界に負けるなとばかり超高層ビルが林立し始めました。
空から見るとさながら超高層ビルはお墓のようであり、大都市は「墓場」に似た壮観です。
「山高きがゆえに貴からず」と言いますが正直言って息がつまりそうですね。
昔、坂本九ちゃんと言う歌手が「上を向いてあるこう」と言う歌で世界中にヒットしました。
超高層地帯を歩くと自然、「下を向いて歩こう」の替え歌を歌いたくなると言うのはなぜでしょうか。

超高層ビルは見事なほど芸術性に欠けているのでは無いでしょうか。そしてうるおいが無い。
江戸時代以前の高層建築と言えば五重の塔ですが、これは素晴らしい。
優美な曲線を描いた屋根が五層に重なり、各層いぶし瓦を整然とふいた姿は何と表現していいかわからないほど美しい。
特に屋根の頂点に五輪の塔が毅然と立つ姿はほれぼれするのですが・・
「なんだ、爺臭いことを言う奴だ」と若者から文句が出そうです。

東京から江戸の面影は消えました。
明治維新で江戸の1000近い大名屋敷が壊され、美しい庭園もその数だけ消滅しました。
かろうじて神社、仏閣にのみ日本建築の美がポツン、ポツン残っています。
大阪も事情は同じでしょう。東京大空襲、日本全土無差別爆撃で大破壊され、さらに高度成長の建て替え時期で江戸時代はトドメを刺されました。
昔は豪農、豪商と言う存在が個人の財力をかけて豪壮な屋敷を構えたものです。
現代の大企業社長はサラリーマンですから個人邸宅に豪商、豪農の意気込みを見せることはできません。

そういえば相続税で文化財的邸宅が国税庁の命令で次々破壊されています。
相続税を物納にするときは更地にせよと言う命令です。
相続税は戦争中の焼夷弾より怖い存在です。
21世紀の街並みは味もそっけもない墓場のような無機的超高層ビル群に埋められるでしょう。

2014/04/14