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「倚らば大樹」-(28)

「3・11を忘れない」祈念像

一心寺境内、本堂正面の藤棚前にこのたび「3・11を忘れない」祈念像を開設しました。ジーパン姿の若い女性が3・11東日本大震災・大津波・福島原発水素爆発を報じる新聞を見ているブロンズ像で、台に乗った高さが大人の背丈ぐらいですからその新聞を覗き込んだり、横に立って記念写真を撮ったり、、、参詣の方々に注目していただけるように念願してのことです。彫刻家竹谷邦夫さんに作っていただきました。
「3・11を忘れない」。そうです、文字通り東日本大震災殉難者のご冥福を祈ることを忘れないのと共に、この大災害を教訓にして文明におごらず、自然を怖れる心を忘れず、日々心がけねばならないと思うのです。この像の隣りには「阪神淡路大震災鎮魂千五百本結願記念樹」が枝をひろげ始めています。ご承知のように6437人の犠牲者が出ました。祈念像のちょっと南には「大正八九年流行性感冒病死者群霊」の大きな慰霊碑が建っています。大正8年、9年に世界で猛威をふるい、日本でも20〜40万人の犠牲者を出した「スペイン風邪」の大災害の鎮魂です。後方藤棚の向うは400年前の大坂の陣で壮烈な戦死を遂げた本多忠朝と彼の部下達の墓。この合戦では両軍死者合わせて10万とも15万とも。さらにその隣には明治維新戊辰戦争戦死者13500人のうち旧会津藩士で大坂圏で亡くなった方々を祀る「会津の墓地」があります。そうです、本堂正面のこのあたりには、戦争や大災害など決して忘れてはならない注意と反省をうながす記念碑だらけなのです。それにもかかわらず、私達はじきに「忘れてしまう」のです。それでいいのだとも言えましょう。しかし時折り、思い出し、少なくとも当面はシッカリと記憶して注意と努力と「絆」を持ち続けようではありませんか。そう祈念して作りました。

2012/04/07